Garigaraseru

◎お芝居と食べ物のきろく◎

野田地図第22回公演にまいる

なんだろな?映画かな?

と思った。

 

吐きそうになるキャスト。

吐く作品。

野田秀樹桜の森の満開の下が大好きだ。

 

走れメルス〜少女の唇からはダイナマイト!〜』を観て野田のおじさまに心を奪われた私は、遊眠社を観られない世代に産まれたことを悔やんだ。

それならこれから先、こんな歯痒い思いをしないよう、今観られる作品をひとつひとつ大切にしていこうと、悔やんだ気持ちがあるからこそ、思えている。

 

毬谷友子が夜長姫の贋作桜の森の満開の下が観たかった。

深津絵里の夜長姫だって観たかった。堤真一の耳男もね。

でも歌舞伎座で私はやっと桜の森の満開に下に身を埋めることができた。

 

夢って叶うんだなぁ

 

あの時観られなかった作品にも勝るような素晴らしい作品に出会う今がある。夢は叶う。

 

そしてまた新しい、野田秀樹の贋作桜の森の満開の下に出逢える。

 

大切に観ます。

演劇が大好き。

いやあ、まいった、まいった。

ナタ・デ・クリスチアノ@代々木公園

家の近くの桜並木がものすごく綺麗で、でも道路沿いなので、ゆっくり花見ができる場所ではなく、

 

あーーーーーーー!!

どうしてもお花見がしたい!!!!

あぁーーーー…もうっ……!!!!

 

という気持ちになったので、出勤前にひとりで代々木公園に寄った。土曜日です。満開です。人ばっかりです。

 

桜には近寄らなかった。

 

でも、これ、とってもおいしかった。

 

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ナタ・デ・クリスチアノのパステル・デ・ナタ(エッグタルト) ¥200(税抜)

 

機嫌が保てなくなりそうな時は、食べ物で機嫌を上げていくスタイルを最近貫いているので、どうしても美味しい物と一緒に桜が見たくて、食べログ検索したら、近くにこのお店。

奥渋、割と歩いて通るのに知らなかった!

絶対ここでエッグタルト買う!

決めてかかって代々木公園へ。

 

でも桜には近寄らなかった。

 

駅からは3.4分。こじんまりとした小さなお店。5.6人しか並んでいなかったので、20分ぐらいは待ったかな?でもサラッと購入できた。

 

本当はご飯がわりにチキンパイとかも買いたかったのだけれど、このパステル・デ・ナタ以外はほぼ売り切れだった!残念!今度買う!

 

サクッとしたパイ部分も含めて6〜7㎝ぐらいかな。割と小さめに感じられはするんだけれど、味が濃厚だから食べ出はある。

甘じょっぱいお菓子って、甘さを塩気が引き立ててくれるからすごく好きで、このパイ部分の塩味もとてもタイプ。

焼きたてはもちろんパリパリサクサクだったけど、2、3日経ってオーブンで温めて食べても、なおサクサク。おいしい!

中のたまご部分はカスタード寄りのプリンみたいな感じでトロっとしてる。ここが濃厚。

パイとフィリングのバランス抜群。

このバランスの良さから、試行錯誤を重ねてキチンと作り上げられているのがよくわかる、ちょこんとした丁寧な可愛いお菓子。

 

また買いに行こ。

 

桜は遠くからしか見なかったけど、公園でのんびりはできた。ふぅ〜っ。

桜散ったあと、近くに住んでる友達誘ってゆっくりしよう〜

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▲代々木公園の桜ではない桜

 

ナタ・デ・クリスチアノ
03-6804-9723
東京都渋谷区富ヶ谷1-14-16-103
https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131810/13153384/

コジト@六本木

レストランて良い時間を過ごす為の場所だなぁ…と、おいしいくてきれいな料理とお酒を口にするたび身に沁みて感じた。

 

昼から贅沢しよう!ということで伺ったのが、六本木のコジトさん。

以前友人が行ったことがあって、美味しかったよー!とのことで誘われて一緒に。

聖地テレ朝の脇。けやき坂登ってすぐのちょっと路地に入ったところにある一軒家フレンチ。

黒いラブラドールくん(ちゃん?)(どっちだっけな?)とお店の女性が物腰柔らかに出迎えてくれて、コートや荷物を預ける。

にしてもお利口さんなラブだった。私なんか、撫でさせてもらった、みたいな感じだったな。飲食店に犬がいるってどうなの?って思う方には確実に向かないお店だけれど、この子がいるおかげでお店全体がほんわかする。いつもはリードに繋がれてるらしいのだけど、この日はリードを外され、客席内をウロチョロしていた。ひさびさに大きい子を撫でられたー!猟犬としても活躍してるんだって。

 

で、2名席に案内していただき、まず飲み物……スパークリング…いや?贅沢するんだからシャンパーニュいきましょうよ、ということで、たぶん、いただいたの、これ。パニエのブリュットセレクション(http://www.dis-export.com/champagne_pannier.html

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▲ハイ!綺麗!

綺麗なものは美味しい!

 

昼間から美味しいお酒飲めるのサイコーだね!ってところからまず、一品目。

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▲サラミ3種と黒オリーブのマリネ

 

鹿のお肉を使ったサラミが一番左の色が濃いやつだったかな。あとはハーブだかなんとかシードみたいなのが入ってると言っていたような。

一口サイズのオリーブもアンチョビの風味が香って、これからいろいろ食べるよ〜!っていう気持ちになる良い塩辛さ。ワクワクしちゃうよね、この後の料理に。

 

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真鯛とホタテのカルパッチョ

 

春を食べる、味と見た目。こういう透明感とか色鮮やかさを前にすると、しあわせだねー、となる。

 

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貴腐ワイン風味のフォアグラテリーヌ

 

このテリーヌの上のジュレがソーテルヌを使ってるって言ってた気がする。大人の甘さのジュレに滑らかなテリーヌの塩気ってこれは魅惑の組み合わせ。

写真には映ってないけれど、脇にリンゴのジャムと黒胡椒が添えられていて、それと一緒に食べても風味が変わるし、またデニッシュがね!デニッシュがさ!サクフワで美味しいの!さらにね…!

 

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▲サンクロワデュモンの貴腐ワイン

 

ご一緒にどうぞって。トロッとするー!フォアグラ、デニッシュ、貴腐ワイン…のループ。ありがとうございます。真っ昼間からさらに調子乗った贅沢になってきましたよー、あーたのしーたのしーおいしー。

 

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▲鰆のグリエ 香草とレモンのソース

 

緑、黄色、鰆、春!!

これは中身を先に見てもらった方がいい。

 

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火の入り絶妙。こんなの絶対家じゃできない。家じゃできないを味わいたくてレストランで食事をするんだ。皮目はパリッとしてるんだよ、だって!このあたりから食べるたびに「ありがとうございます」になってくる。

あ、この辺からバケットも用意してくださったかな?おかわりも聞いてくれた。おかわりした。

 

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▲栗とフォアグラを詰めたウズラのロースト

 

頼んだコースだとメインが仔羊だったんですね。

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…だったんですが、すみません、私が羊やらがどうしても苦手で…とワガママを言ったところ、ウズラなら用意ができますと、こちらのなんともう見た目から、ありがとうございます、なローストに変更いただきました。(予約の時にお伝え出来ればよかった…!申し訳ない!ありがとうございます!)

 

あれ?これ、人生初のウズラだね!

もっと野性味溢れるのかと思いきや、鹿とかも苦手な私でもペロッと美味しく食べられる雑味のない、良い意味で淡白なお肉。そこにフォアグラのコクと栗の甘味が加わって、更にソースの深み。

付け合わせのレンコンが私の中で大ヒットで、焼き目とちょっと強めの塩加減がアクセントになってお肉をより美味しく食べさせてくれた。

この淡白さだと今思えばピノ・ノワールだったのかな。そういえばブルゴーニュを最初に勧められたな。あ、ウズラと言えばピノって書いてある!なんでも勉強だ!なるほどな!こうやって合わせていくのな!神の雫な!(https://shokulove.jp/topics/ca02/s12/0169?id=100

でも、ボルドーもありますよ、と言われ、しっかりした赤飲みたい気分だったのでボルドーをお願いしましたです。

 

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▲コートドブールのロックドカンブ2011

これかな?(http://www.wine-echigoya.com/smp/item/roc-de-cambes.html)香りが芳醇で美味しかった〜。鼻から入ってふわっとする。ありがとうございます。

 

ウズラ食べ終わったら次デザート。

コース終わっちゃう。と寂しさを感じつつ…

 

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▲クレームダンジュ

 

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パッションフルーツのマシュマロとチョコ

 

チョコ大好き。

 

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カプチーノ

 

こんなデザート美味しいに決まってるじゃんね(涙)(泣いた)

結構さっぱり系のクレームダンジュだった。いちごの酸味もキレイに立つ。

 

食後のコーヒー、紅茶はご覧の通りカプチーノなども用意してくださり、友だちはハーブティーを頼んでいた。

おかわりいかがですか?と声をかけてくださったのだけれど、次の予定があったのでお茶は一杯でお暇しました。

 

自分にとっては背伸びランチではあるかもしれない。やっぱりレストランって接客されるだけの一方通行ではなくて、食べる側、お金を払う側でもあるんだけど、そちら側もお店の方と呼吸を合わせる必要のある、相互コミュニケーションの場だと思っていて、良い意味で対等であるべき。私はまだまだ足りないだらけだ。

その辺が演劇と似てるから食べることも好きなんだけど、ちゃんとした観客になりたいし、同じようにちゃんとご飯を食べられる人になりたいなと、たまの贅沢をしてより思うようになった。

 

7,000円のコース頼んで、2杯ワイン飲んで、会計は一人11,000円弱だったかな?

これ、知ってます?髑髏城より、修羅天魔より安いんですよ、これだけたくさん食べて。天海祐希、高い女だわー。でも同じぐらい満足度あるわー。

 

 

あーおいしいって幸せと直結する。

(新感線の天海祐希も幸せと直結する)

 

 

ご馳走様でした!

美味しくて楽しかったです!

一緒に行ってくれた友達もありがとう!

精進します!

ありがとうございました!

 

コジト
〒106-0031 東京都港区西麻布3-2-15
12,000円(平均)4,000円(ランチ平均)

 

かつれつ四谷たけだ@四ツ谷

友だちとスカイツリーの宝塚のやつ行こう!って約束していたのに、仕事で駆り出され、別日に移してもらうことに…

 

むーーーーーめんどくせーなーーーー

ここは美味しいもの食べとくかー

あーー揚げものー、揚げもの食べたいわーーー

 

ってなったので、仕事の前に四ツ谷のたけださんへ。初。

 

街の定食屋さんだけど、働いてるお姉さんが割と同い年ぐらい?30前後な感じのお姉さんたちで、もっとおじさんとおばさんが「はいよ」って感じを想像してたんだけど、これは思ったより女ひとりでも入りやすいわ!

おじさんと向かい合わせの相席だったんだけど、荷物置くとこないから、ま、じゃ、別に地べたでも…と思ったら、またお姉さんがカゴ持ってきてくれて、『あぁこのサイズ感の定食屋さんで、そんなことまでしてくれるんだ…!』とさらに好感度アップ。

 

もうあれだな、食べる前から美味いな。

 

揚げ物の口になってたので、熟成ロースカツ定食頼みました。

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▲1,180円

 

見てよ、この綺麗な1,180円。

すぐ食べたくなって、写真撮る前にかじったからね。

うまいよね。

 

塩ver.

ソースver.

キャベツ(ごまドレ)と一緒ver.

全部MIX ver.

 

と微妙にカツの味を変えながら、お味噌汁とご飯をいただく。

 

衣の厚さが均一でバツグンだし、火が通りきったその瞬間食べてるような感じでお肉柔らかいし、キャベツかわいいし、ポテサラたまねぎ入ってなくて私のためのポテサラだし、豚の脂甘いし、あれ、なんか、これ本当に美味しいわ、なんだろ、おいしい、あ、完全食だな、これ、完全だ、完全食。

って、口にするたびにおいしさを実感して、食べてたらたのしくなってきた。

 

ペロッと完食!満足!おいしかったー!!しあわせー!!

 

サクッと仕事頑張る元気をいただきました。ありがとうございました。

ごちそうだった。ごちそうさまでした。

 

 

4月末までやってるってレジのお姉さんに聞いた、カキバターがまたあれ本当においしそうで、4月末までにもっかい行ってカキバター食べる。決まった。

 

あぁあと、あのソースが入ってた容器。あれ優れものと思う。なかなかいいソース用の容器って世の中にないんじゃないかと思ってて、あのどろっとしたのが固まらずに、かといって少な過ぎず口から出てきて、しかも液垂れしない注ぎ口。

だらーってなったら拭かない限り持ち手まで汚れたままになっちゃうからね。

こういうとこも揚げ物が有名なお店らしいかもしれない。

 

平日の17時15分頃お店着いたら、並ばず入れたので、連日並んではいそうだけれど、うまく時間をズラせばいいのかな。

 

あとお店がある、しんみち通り、この通り、すごく飲食店に活気がありそうな通り!隣の中華バルもわかりやすく気になったし、四ツ谷で飲む機会はほとんどないけど、でも興味が湧いた。

 

あーカキバターいつ行こっかな〜〜

 

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赤道の下のマクベス@新国立劇場 小劇場

40代以降の観劇に向けて、もうこの見方のままではいられない。

 

感覚だけで芝居を観ていて許された?のが10〜20代だとしたら、30代、今の私はそれまでまったく足りていなかった知識を身に付けた上で、これから先、芝居と出逢いたい。出逢わなくてはいけない。

そうでなければ、どんなに良い芝居と出逢っても自分のせいでその出逢いを貧弱なものにしてしまうと『赤道の下のマクベス』を観て改めて思った。

 

BC級戦犯に問われた、死刑囚たちの監獄の中での話。場所はシンガポールチャンギ刑務所。1947年、夏。

朝鮮人と日本人が収容される独房が6部屋あり、その全てが中庭に面していて、みんな中庭への出入りは自由に許されている様子。

演劇に憧れ、ボロボロになるまで『マクベス』の戯曲を読み込んでいるナムソン(池内博之)。と、いうと真っ直ぐな演劇青年という感じだけれど、平田満さん(役名忘れた)と囲碁を打っていて、負けそうになるとひっくり返すし、6人の中だと一番年下らしいムンピョン(尾上寛之)がメソメソしていると怒声を浴びせながらからかいにいくし、下ネタ日常茶飯事だし、楽観的でカラカラと能天気な雰囲気を漂わせた、お腹の筋肉が6つに割れた男、だった。

 

彼は『マクベス』を読んでいる。

なぜマクベスはダンカンを殺したのか。

殺さなくとも王にはきっとなれたのに。

マクベスは破滅への道を自ら選んだんだ。

じゃあ自分は?

理不尽としか言いようのない罪で、朝鮮人であるのに日本人として死刑を待つだけの身だ。

理不尽?

違う?違う選択はできなかったのか?

あのとき、あの場所で。

出来たはずだ。

マクベスがダンカンを殺し破滅の道を自ら選んだように、自分も自分であの時、破滅への道を選んだんだ…!!!!

 

いつもいつもうざったいぐらいに軽く振る舞っていたナムソンが、憧れ続けた『マクベス』をキッカケとして思いを吐露する。

 

違う!!!!

あれ以外の選択肢なんかあの時なかった…

 

とナムソンの同胞が叫ぶ。

 

 

劇としてそれぞれが、それぞれ、今この監獄にいる理由が語られる場面があるのだけれど、その情景が目に浮かぶ。

この監獄の様子も「事実」と頭の中でリンクしながら芝居を観続けることになる。

たった70年ばかり前の話でしかない。たった70年前だ。いま私が会って話して一緒にご飯を食べることができる祖母も70年前には生まれている。そう遠い昔の話ではない。

 

一体誰が悪いのだろうか。

この人たちが死刑になる理由、その大元の命令を下した人物を辿っても、その像はとても巨大で、黒く蠢いていて、それでいてぼやけており、もう到底「人」ではないような気がしてくる。

「人」の中の悪の塊のような。

もし劇中でも挙がっていたような特定の「誰か」をあなたのせいだと罰したとしても、またむくむくとわき上がってくるのだろう、黒い何か。

 

みんなが、

知らないまま。

考えないこと。

関係がないと思うままでいることが、この黒い悪意の正体なのだと思う。

 

だとすると、私、自身にも、責任がある。

泣いてるだけじゃいけない。 

 

頭の良い人たちは、どこでこういうことを知って、学んで、どこで気が付くんだろうか。

学校での勉強は、試験に向けて覚えるだけで、それをきちんと現実と結びつけるような学び方を自分はしてこなかった。

演劇に出会ってそのことに気付かされたけれど、観るのばっかり楽しくて10代から20代の10年間も結局学びに結びつけず過ごしてしまったので、30代になって感じるこの欠落感。

 

蜷川幸雄に怒られる。

 

と頭の片隅でずっと思ってたりしていて、実は。

蜷川幸雄に恥じない観客になる、という途方も無い目標だけは掲げて、ちょっとでも疾走する観客でいたいと、その為の30代の10年間を。

 

でないと、10代の終わりから2016年までに私が蜷川幸雄から受け取ったたくさんの作品たちを、私が自分の中に残すことができず、私が枯らしてしまう。せっかく何本も何本も観せてもらったのに。もう観られないのに。過剰なまでに自分の中に残しておくために…!

 

『赤道の下のマクベス』を観てこれ書き始めたわけだけれど、こういうヒリヒリした感情が湧き上がる芝居だった。

 

 

 

平田さんが、死刑実行の日のナムソンを父親の代わりとして抱き締めるシーンがあるのだけれど、もはやこのシーンの平田満は神様に近かった。

ナムソンの父親でもあり、平田さんの役自身でもあり、でももっとそういう存在を超えて、池内さん演じるナムソンの全てを抱き締めて、包み込んでいた。

 

男臭い芝居なんです。

男しか出てこないし、監獄の話だし、赤道の下で暑いし。

 

でもこの男臭さも芝居の魅力。

カーテンコールが、一回一回の公演を生き切った、その絆と、達成感や責任感なら満ちていて清々しかった。役者さんみんな格好良かった。

 

3月25日まで、新国立劇場小劇場で。

その後、兵庫、豊橋、北九州でも上演。

是非。

演劇は本当に強いです。

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江戸は燃えているか@新橋演舞場

中村獅童の中に、中村勘三郎を見た。

 

三谷さんが、エッセイ「ありふれた生活」の中で勘三郎さんと獅童さんを重ねていたせいもある。でも似ていた。

三谷さんは獅童さんのこと好きなんだなぁ。

良い意味で獅童さんのパワーに頼った作品だったと思う。

 

江戸城無血開城をめぐるコメディ。

獅童さんと松岡くんが似てる(似てるか?)ところから、むくむく膨れ上がったようなお話で、勝が「西郷隆盛に会いたくない!!」と駄々をこねるから、松岡さん演じる勝家を訪れる庭師・平次を変装させて西郷さんに会わせちゃえ!と周りの人々が画策する、という。

 

一幕は偽物の勝海舟を本物の西郷隆盛に会わせる。

二幕は本物の勝海舟に偽物の西郷隆盛を会わせる。

基本、この流れでドタバタ。

 

ウケていたネタはすっかり忘れましたが、本当によくお客さんが笑っていた。

作風としては近作だと『酒と涙とジキルとハイド』が近いと思うのだけれど、私はそこまでこういう喜劇に笑いのツボがないので、周りが笑うほど笑わず。「面白いよ!」を前提とした、そこはただの個人差。

 

そんな中でやはり一番笑ったのは、獅童さんのエネルギー爆発な二幕。

自分は「ただいまおじさん」ではなく本物の勝海舟だと、西郷隆盛にわかってもらう為に、女中のいと(磯山さやか)が「はい!旦那さま!」と自然と返事をするのを利用しようとする場面。

 

毎回、毎回、ここで、お客さんに今日だけのハプニング、アドリブと思わせるぐらいの慌てた熱量で爆笑をかっさらっているんだろう。

 

汗だくで吠える獅童さんを遠巻きに見る、ほぼすべての出演者。

みんな目をそらしたり、うつむいたり、吹いたりして、獅童さんが苦しみのたうちまわるのを、もはや観客になって楽しんでいる風。

 

ここで獅童さんの中に勘三郎さんを感じた。

 

いや、もっと前から、最初からか…わがままで、勝気なくせに弱気で、でも腹を括ったら豪胆で格好良くて、でもそこに至るまで煩くて…端的に言ってみれば面倒せぇ男として描かれていた勝海舟なんだけれど、それでも人を惹きつける圧倒的なチャーミングさに溢れていた。そんなところが勘三郎さん。

そしてこの二幕の暴走。

 

もうちゃんとやれるまでオレ帰んないし、帰らせねーからな!

あの人ね、自分がかっこいいと思ってるんだよ!あんなすっと立っちゃってさ!

おい!!ちゃんとやっぞ!!次こそな!!ねぇ、聞いてる!?!?

声ちっちぇえんだよ!!!!!!!

 

みたいな感じで、とにかく力一杯、大声で台詞を吐いて観客を面白がらせてくれた。笑わせてくれた、楽しい特別な気持ちにさせてくれた。

 

勘三郎さんのお客さんの引き込み方と同じ匂いのする引き込み方。

ぐっとその人に観客の集中が集まって、次は何をするのか、目が離せない。

とにかく見ているだけで楽しい。おかしい。愛しい。

 

歌舞伎役者は普通の役者さん以上に、年がら年中芝居の世界の中にいるイメージがある。それも幼い頃からずっと。そんな芝居漬けの生活が、こういう人を惹きつける底力を持つ身体を生み出すのだろうか。

歌舞伎役者を除いて、こういう盛り上げ方をできる人、市村正親ぐらいしかパッと思い浮かばない。その市村さんにしたって、歌舞伎役者と同じぐらい若い頃から芝居漬けの印象がある。

 

お客さんを笑わせるという目的の中で役者としての胆力を爆発させて、どんな状況も観客を惹きつけ乗り越えてゆく。そしてその爆発力はそのまま獅童さんの大きさとして感じられる、そんな場面だった。まぁこちらはただおかしくって笑ってただけだけど!

 

 

そして、ここまで大きく爆発する姿を見せられた後、すっと腰を落として、肝の据わった静的な芝居をすると、その落ち着きもより格好良く見えるってなもので。

 

獅童さん、とっても大きな、素敵な役者さんになられたな。

 

と、実感できたことが、この『江戸は燃えているか』一番の収穫。

 

芝居を見始めてやっと十年過ぎたところ。付かず離れずでも見続けていたら、こんな風にパッと花が咲くような瞬間にも出会えるわけだから、観ることはやめられない。変化していく姿を感じられることが楽しいんだ。

 

ただいまおじさん、おかえり!!

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

さて、ほかの出演者の皆さん。

 

確か、豪華だった。

確か獅童さんとTOKIOの松岡くんが真ん中で演舞場で三谷幸喜、はい、買っとこか。ぐらいの三谷買いをしていただけなので、誰が出てるのかおぼろげなまま見始めた。

 

うぉーーー聖子さんやー!

八木さーーーーん♡

あ、松岡茉優ちゃん!!

ずん飯尾坂本アンナチュラル !!

ってか、妃海の風ちゃんじゃん!

はい、森本頑張れー(田中圭くん)

あら、堀田作兵衛まで(藤本隆宏

 

豪華だった。

 

 

聖子さんの芝居は、タイミングと動きから静止する際の身体の型といい、いのうえひでのりが居らずとも、いのうえ型芝居の体現者。型というと硬いイメージを持たれるかもしれないけれど、聖子さんの型は柔軟な型。例えば襖をしめる、振り返る、そんな動作だけでも美しく三谷演出にハマっていて、見ているこちらがガッツポーズしたくなる。あいも変わらず大好きな女優さん。

 

八木さん初舞台だって!真田丸があったからお着物姿も真田丸登場初期と比べたら随分と馴染んでいて、しかも三谷演出。私、三谷幸喜と女優の趣味合うから。三谷幸喜が好きな女、たぶん私も好きだから。三谷さんが八木亜希子のこと好きなのよくわかりました。有働由美子のことも好きでしょ、三谷さん。有働さん、フリーになったら三谷芝居ね。

 

あ、有働さんと言えば、冒頭のナレーションは有働さんじゃないのかな?パンフレットを購入された方がツイッターでつぶやいてらしたのが、

 

「土味憂子」→「どみゆうこ」→「うどうゆみこ」→「有働由美子

 

アナグラム説。たぶん、諸事情ありでクレジットできない、で、これが正解でしょう。^_^

 

今もなおノリに乗ってる松岡茉優ちゃんに三谷幸喜がこの役を振ったことにまず笑ったし、安心もした。演じることに真っ直ぐな自分勝手だよね、茉優ちゃん。いいよ、いいよ。『陥没』のKERAさんの当て書き、そして三谷さんのこの役…信頼する二人の作家が女優・松岡茉優にこんな役を当てるのだから、彼女を見ていると想起させられるのがこういうキャラクターなのだろう。無自覚の残虐性がある、可愛いくてしたたかに賢い…実力とド根性を作家が認めていないと、こういう役は振れない。松岡茉優は信頼された女優だと思った。(早く元気になれよー)

 

ずんの飯尾さんは、独特のテンポをどんな場でも崩さず発揮できるの貴重!三谷作品の中でも殺されないで、そのテンポを維持できる、また三谷さんもそのままのテンポを使えるだなんて、すっげぇ!

 

すっげぇ!もう一人、妃海風!!!ヅカファンだからOGはなんかみんな親戚の子みたいな気持ちになってしまうのだよー。めっちゃよかったよー。勝の妹役で、圭くんの奥さん。小さな湯の町と生まれの西の方で鍛えられた独特のテンションの高さと、的確に仕事をこなす職人的技術力の高さで、場面をしっかりかき回してた。三谷さんが『妃海さん、できるな』と感じてくれて、どんどん要求が高まっていったんじゃないかと思える場面の数々で、そういうのがまた嬉しかった。いきなりのレビューシーンも、演舞場で求心力ない人に任せられないよ。しっかり爪痕残してた、風ちゃん。がんばった。

 

がんばったのか?うまいのか?へたなのか?わっかんないな!となるのが森本。。。あ、田中圭くん。基本風ちゃんの尻にひかれた旦那さんなんだけど、ラストはピシッと嫁をキュンとさせてたし(そのキュンを見せるのならば宝塚の娘役トップ、芸持ってますよ)、格好もいい。ただやる気があるんだかないんだかとかもよくわからない。あるようにも見えるしないようにも見える。割と現代っ子俳優だな。(同世代)

 

獅童さんのことはいっぱい書いたから、松岡さん。

 

この人になら米倉涼子あげてもいい!←

 

最近超米倉好きな、ヨネ何してても可愛いよ時期に突入している私が、大事なヨネをあげてもいいと思うんだから、松岡昌宏、とんでもねぇ、かっこえぇ。

 

歌舞伎に型があるのならジャニーズにも型がある。

 

梯子に座った姿の、なんともう格好良いこと。脚の長さ。羽織をまとう姿のキマること。おいおいおいおい…!となりました。

自分が格好良いことをわかっていて、それをさらによく見せる見せ方も存分に知っている人。プロのカッコイイがジャニーズ。ありがとうございました。

 

 

三谷さん、演舞場のキャパで、これが出来るのだから、演舞場のキャパでも『国民の映画』 方面の作品、作れるのでは?

KERAさんの『百年の秘密』に笑いがないと本人たちは言っていたけれど、やっぱり笑える場面はあると私は思っていて、それは三谷さんの『国民の映画』も同じで、だって『真田丸』もそうだった。

 

どんな人も楽しめて、でも笑いだけでは終わらせない。

ずっと後世まで残るような。

そんな三谷幸喜の集大成と言えるような作品を演舞場ぐらい大きな劇場でも観てみたい。

そうしたら、単純に、もっと沢山の人に観てもらえる。 

毒おんな 千穐楽 3回目@ザ・スズナリ

私が小泉今日子という人が好きな大きな理由のひとつに、

 

「絶えず変化し続けているから」

 

というのがある。 

 

時流を読むのに長けていて、更にその中で自分がどう存在したら良いか、をものすごいスピードで判断して、実行まで持ち込める、すっごいナチュラルクレバーな人だと感じていて、そんなところをとても好きでいる。

 

芝居でも同じだなぁ。

 

良い意味で空気を的確に読んで、変わる。「小泉今日子」という軸はブレないまま、変わる。

 

ちょっとふてぶてしさが増したり、妖艶さが増したり、単純に声の強弱が変わっていたり……カエデという役自体はブレていないのに、なんだか千穐楽の今日は、今までよりも更に輪郭がはっきりとしたカエデに出逢えた気がした。

 

外波山さんがカーテンコールで、独立後初の仕事が椿組のスズナリだった〜〜みたいなお話を。

照れ、というか、『独立後初か、な??初?うーーん初なのかな?初かも?(アイドル笑顔首かしげ)』みたいな顔して笑ってた。

 

芸能界という峠ではなんだかんだ負けないみたいな、頭文字Dみたいな、そんな感じで、キレッキレを攻める、そのテクニックつーか、卓越したバランス感覚を『毒おんな』からも感じられて、楽しかったです。

 

 

ピーター・ブルックが、『なにもない空間』の中で、劇が生命を得るためには、「反復 表現 援助」が必要なんだけど、これだけだと本質が欠けているって言っていて…それは、演劇においての真理はつねに動いているからだ、って。

 

小泉さんて、生き方そのものがドラマみたいなところあるし、「演劇」ってそういう意味でも合ってるのかもしれないなぁ。

 

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3回見て、どのシーン、どの台詞が一番好きだったかな?と思うと、福本さんと岡村さんのラストシーンだったかな、と。

 

殺しなさいよ

できるかボケ

絶対死なないから

死ねバカ

 

なやり取り。

みんなこういう鬱屈は抱えながらも、なんだかんだ生きて行く。モヤモヤしたままだけどまぁ生きてこうぜ、って気分にはなる。

素直に笑いあえる日々が、この先、あの夫婦に訪れますように。

 

そして、カエデは逃げろ。

この人は、真っ白な雪の下に死体を埋め続けて、その上に立ち尽くすのが、もはや美しく似合ってしまう人。

あぁ相米慎二監督の『風花』的な雰囲気も。あとあれも思い出す、槇村さとるおいしい関係』の可奈子さん。

もう因果を断ち切って、新しく産まれなおすには母親に会って、一回殺すしかないんじゃないの、この人は。

それかもう母親に会わずに警察に捕まって、監獄に入れられて、お節介ババア冷麺になってババアの仲間と可愛い勇介に出逢い、角刈りの技術を身につけて、更生するか。

 

哀しいままではいてほしくないな。

更生して生きなおせたらいいな。

 

 

全然違和感なかったけど、小泉今日子の初スズナリ興味深く拝見させていただきました。

小泉今日子も器が大きいけど、スズナリっていう劇場も負けじと色んなモノを受け入れてくれる。

いい小屋!スキ!!

またいつかスズナリでも…