『ふぞろいの林檎たち』3話

自分の年齢では、決してリアルタイムでは見られなかった(ちなみに現在30)(うわ、30なんだ、もう)、昔のテレビドラマや映画を辿りたい!という気になって、まずは山田太一さんに触れてみることにした。

 

ビーチボーイズ』や『きらきらひかる』、『最後から二番目の恋』などなど宮本理江子演出を見て今まで育ってきたので、まずは、そもそも宮本理江子を育てた(リアルに)、山田太一さんの脚本作品に。

本当は『岸辺のアルバム』か『早春スケッチブック』とやらが見たかったんだけれど、TSUTAYAになかったので、タイトルは幾度となく耳にはしてきたものの、見たことはなかった『ふぞろいの林檎たち』をレンタル。

 

・・・面白い。

 

もう一回言っちゃう。

面白い。

ちなみに鴨下信一演出です。

 

いやらしくなく登場人物の性格や生活環境が浮かび上がってくる「どんなドラマでもこういう第1話が見たいです」というお手本のような1話から始まり、徐々に物語が動き始める2話。

恋愛、家族、友情、社会との関わり・・・大学卒業を間近に控えた、まだ大人にはなりきれていない、若者たちの「その時」と社会の姿が同時に見えてくる。

 

そして、3話。

ラストの岩田(時任三郎)が夜間警備のバイト中に、自殺しようとしていた(偉そうな)男を引き留めるシーンでやられました。

なんでこんなに心鷲掴みにされたんだろう、それはきっと「人間」が描かれていたからだ。

 

男の隣にやってきた死が、お茶の暖かさや、ただそこに自分ではない別の誰かがいるという、たったそれだけでふっと去って行く。

でも意識してしまえば、そのくらい簡単に死は身近にやってくるものだし、またものすごく些細なことで離れても行くものなのだ。

短いけれど、そんなシーンだった。

多くを語らずに表現する、引き算の美学が光る、脚本と演出。

 

・開けられた窓、吹き込む風の音、カサカサと揺れるカーテンと観葉植物、窓に入っている逆三角形のマークが「下へ飛び降りろ」と誘うような不穏さ。

・取り乱した様子の一切ない、冷静とも言える男の背中が余計に不安を煽る。

・岩田が一度立ち去った後、気になってまた部屋に戻るのも良い。あそこで戻らなきゃ死んでた。

・戻ってみたものの自殺を考えていたかどうかもうまく確かめられず、しかし漂う死の気配を前にして、実際何もできない岩田。

・風に吹かれて乱れる男の髪。飛ばされる机の上の書類(ここで少し異変)(心の乱れが映像からも見て取れる)。

・重厚な本棚と机で、男の身分も分かる。

・岩田が窓を閉め、カチャっと鍵を閉めると少し遠ざかる風の音。効果音の演出。

・「お茶、どうっすか?」ここでお茶淹れる選択をする岩田くんの機転と男気。

・そんな岩田に苛立つ男。「出て行けと言ってるんだ!!」と、強く怒鳴るが、

・「出て行きません!!」と同じぐらい強く返す岩田。これだけで、男が確かに自殺しようとしていたことと、それを察して岩田が止めようとしているということが「自殺」という言葉を使わずに伝わる。

・直接的な言葉って使わない方が深さが出るのかもしれない。単純に美しくなるよね、言葉も、展開も。

・それで、その後、お茶だけを映すんですよ。ここで机に置かれたお茶だけを映すの、すごい。憎い。天才。

・なんでもないお茶であること、結構熱いこと、そのお茶を知らない若い警備員が入れたこと。

・このなんでもないことで、死が遠ざかっていく。

・さらにこの後「なんで大手企業は募集大学を限定するんですか?」という質問を岩田が男に投げかけるのだけれど、ここでこの台詞を岩田に言わせるのか!!という、ビターで大人な脚本。

・四流大学出身、学歴社会、その波の中でもがきながらも生きいてく姿っていうのが、きっと『ふぞろいの林檎たち』。

・つまり、人の死を前にいきなり主題ぶっ込んできた。

・相手はおそらく大手企業の重役、岩田はボロ大学の4年生、この溝と思われるものが「死」を前にして一時、埋まるんです。むしろここでしか言えない台詞だった。人間として平等な空間が一瞬生まれてる。

・それをこんな形で作り出せる脚本家って。山田太一って。

・「出て行ってくれないか?行きなさい。」「駄目です、まだ行きたくありません。行けません。」

・ここで男、崩壊。顔を手で覆って、泣く。自分のなかから死を出し切る。

・だから「夜の巡回は二人でするんじゃないのか?」という日常的な言葉が男から出る。

・なので「そういうことを気にするようになれば大丈夫です」と岩田が返す。

・見事。見事だ。美しい。

・互いに察することで成立する会話。

・「行きます」「ちょっと待て」「なんすか?」「もう一杯飲んでけよ」

・男、酒を出す。

・ここでもう一度、外からの風の音。これは死の音ですね。

・窓の逆三角形の下を示した矢印を映す。これは死の方向ですね。

・男がその矢印を見る、机下からのカメラアングルも最高。これは死からの目線ですね。

・このアングルからつぶやくように「助かった・・・よく気にしてくれた」と、我に返ったというように、本音が出る。

・すごくすごく会社の中では偉そうにしているだろう男なのだけれど、滲み出る弱さ、脆さまでをきちんと映像に映し込んでいるところが憎い。うまい。

・「もう大丈夫だ」「いいっすね。飲みましょう。」

・ここで「いいっすね。飲みましょう。」とちゃんと言える岩田、かっけぇ。

・飲んでいるところを、先輩に見つかり、岩田と男、爆笑。

・ここで人って笑うんだ。笑うんだな。

・エリィーーーーーー♪エーーーーリィィーーー♪

・そしてサザン。つづく。

・素晴らしいドラマだとしか言えねぇ。

 

さて4話見ます。