ウインド・リバー
ジェレミー・レナーが、彼の芝居がまた見たいな。と思ってふらっと2回目を見に行って、驚いた。
私、この作品の半分ぐらいしか、初見で見ていなかったかもしれない。
テキストと映像の肝を掴んで関連づけるチカラが弱いんだと思った。
この映画、派手なアクション、派手な感情の動きがあるわけではなく、それこそ深々と冷たく降り積もり、時に荒く吹雪く雪のように、登場人物が行動し、そして想いを、心の痛みを胸に鋭く溜め続けていく。この土地にあるのは、雪と静寂だけ。
この静けさの中で動く物語を、人を、私は初見では感じきれていなかったんだなぁ…。
コリーがウインドリバー保留地に入った際に、ちらと映るボロボロになったまま掲げられた星条旗。そもそも冒頭の事実に基づく、という一言。
繰り返されるコリーの「俺はハンターだ」という台詞と、終盤コリーがピューマ=獲物を見付けるタイミング…この辺は硬質な脚本のうまさというか、良い意味で映画らしいなと思った。事実に基づくを前提としながら、やっぱりストーリーはあるよ、という映画の強さ。ドキュメンタリーではないのだ。
あと100発100中かよ、というさすがのジェレミーの射撃能力にはキュンとしてしまう。狙った的は弓でもライフルでも外さない。最初に少女の遺体を発見した際に、一瞬、膝をついて顔を下に向けたまま動けなくなるジェレミーもいい。あそこでまた深く傷が抉られたはずなのに、スッと顔を上げて、なすべきことをなす。
コリーが弾丸を自分で作っているシーンとかとても良いよね。すごく職人的で、落ち着きを感じるんだけど、それは「世界ではなく感情と戦う」と言い切った、その彼の静謐な信念と繋がるような気がした。
コリーが心の中で愛する娘と会い続ける為に向き合ことをやめない痛みは、想像を絶するものなのに、彼、静かに、静かに、息を潜めて、雪に身を隠して、戦い続けてる。復讐の仕方も静粛そのもの。その前に、雪山の中、いきなり現れて顎あたりにキツイ一発食らわせてるけど、あれはただただクール。
でも、親友の哀しみに触れるとき、自分の娘を語る時、時に目に涙浮かべて、ものすごく優しい目をする。仲間や家族にだけ心を許している、野生動物みたいだよ。
この役を、こういう風に見せるジェレミー・レナーに惹かれたのだなぁ。
派手な映画はひゃっはー!!って見ていればどうにかなるけれど、こういう静かな映画をキチンと初見で観る為の力、もっと身に付けたいと思った。
初見の思いをグッと深める発見が多過ぎて、あぁ、映画慣れしてないんだ、だからこんなに見落としてるんだ…と自分に呆れながらも、実はとてつもなくワクワクした。
『万引き家族』とかだとここまでこうはならない気もするので、さらに言うと字幕で観る洋画慣れしてないのかもしれない。
よく見られれば見られるほど、深さが増すような、『ウインド・リバー』のような、こんな映画にこれから先でもたくさん出会えるはずなので、自分をイジメて、鍛える甲斐があるなと(笑)、まだまだいける。
主にじぇれみが与えてくれた、私の中のこの新しい楽しさ、ゆっくり噛み締めながら、味わっていきたい。
ありがとう、Jeremy Renner