シアターコクーン ライブ配信 プレイタイム@アーカイブ
これまで配信の演劇……いや、やっぱり演劇は配信された時点で演劇ではないので、演劇人による配信かな?で、きちんと観たのは『12人の優しい日本人』ぐらいで、他は観ていない。
有料配信を観たのはこれが初。
シアターコクーンの『プレイタイム』。
TLに流れてきた評判が概ね良かったのと、シアターコクーンという劇場がこの状況下でどういった作品を発信するのか興味があった。
メインの出演は森山未来、黒木華、あとダンサーさんがひとり、北尾亘さん。
スタッフとして構成・演出に梅田哲也さん、演出・美術に杉原邦夫さんの名前があって、原作に岸田國士の『恋愛恐怖病』、原案に梅田さんの『インターンシップ』とある。
あとは演奏で角銅真美さんをはじめ、ほか数名……
と、演出家が二人?原作と原案がある?というようなとこからも、やはり普通の演劇を配信したわけではなく、映像にもなることが前提の、でも演劇でもあるニュータイプの作品、という感じはしてくる。たまに映ったけれど、実際コクーンにもお客さん入ってました。
ぶっちゃけてしまうと、まぁ私はそこまで興奮したり感動したりはなかったのだけれど、でも劇場のキャットウォークから始まり、さまざまな舞台機構が動き始め、そこに役者がふっと現れ、演じ、そしてまた役を離れ、自分自身に戻り、劇場もまたバラされて、誰もいない空間に戻っていく……
という演劇の日常の一連を観られたのは興味深かった。
あんなにたくさんのスタッフさんがバトン上げたり下げたりで、舞台美術を動かして、それでいて成り立ってるのが演劇なんだよなぁ……と改めて。
人の気で、作品の気で、劇場は本当に変わる。
いま、東銀座で歌舞伎座の前とか通ると、歌舞伎座が寂しそうで泣きそうになるよ。
相手に好意があって、近付きたいのに近付き過ぎてしまうことに恐怖を感じる男女の揺れ動く様が詰まった『恋愛恐怖病』という軸の作品が、私には劇場に近付きたいのに今は少し怖い、演劇への思いと重なる気がした。
でもやっぱりいつもいつも演劇が恋しい。
コクーンは自分にとっては一番大切な劇場で。
とにかくこの劇場で蜷川幸雄と野田秀樹……その他ももちろんだけれど、日本の演劇のある意味ど真ん中を浴びるように観させてもらった。
ほんとにほんとに浴びた!ばしゃー!って。
ポピュラーとアングラを同時に成立させることができる稀有な劇場だと思う。
だから、松尾さんが芸術監督になってくれていますごく嬉しい。
荒野に立ちがちな演出家、松尾さんの言葉も貼っておく。
シアターコクーン芸術監督 松尾スズキ | Bunkamura
「コロナの荒野を前にして」がすごく強くて優しい。
今は焼け野原だけれど松尾さんがまずただそこに立っていてくれたら、そして役者さんや、スタッフさん、観客として私自身も……演劇にまつわるたくさんの人が元気でいられたら、またいつか荒野から演劇をはじめられる。
『プレイタイム』を観ようと思ったのも、そんな日がくるのをまた待ってます!という気持ちを込めた、お布施だった気もする。
私が勝手にコクーンからはじまりたかったんだなぁ。
19日までアーカイブで観られます。
森山さんはやっぱり素敵な表現者。