江戸は燃えているか@新橋演舞場

中村獅童の中に、中村勘三郎を見た。

 

三谷さんが、エッセイ「ありふれた生活」の中で勘三郎さんと獅童さんを重ねていたせいもある。でも似ていた。

三谷さんは獅童さんのこと好きなんだなぁ。

良い意味で獅童さんのパワーに頼った作品だったと思う。

 

江戸城無血開城をめぐるコメディ。

獅童さんと松岡くんが似てる(似てるか?)ところから、むくむく膨れ上がったようなお話で、勝が「西郷隆盛に会いたくない!!」と駄々をこねるから、松岡さん演じる勝家を訪れる庭師・平次を変装させて西郷さんに会わせちゃえ!と周りの人々が画策する、という。

 

一幕は偽物の勝海舟を本物の西郷隆盛に会わせる。

二幕は本物の勝海舟に偽物の西郷隆盛を会わせる。

基本、この流れでドタバタ。

 

ウケていたネタはすっかり忘れましたが、本当によくお客さんが笑っていた。

作風としては近作だと『酒と涙とジキルとハイド』が近いと思うのだけれど、私はそこまでこういう喜劇に笑いのツボがないので、周りが笑うほど笑わず。「面白いよ!」を前提とした、そこはただの個人差。

 

そんな中でやはり一番笑ったのは、獅童さんのエネルギー爆発な二幕。

自分は「ただいまおじさん」ではなく本物の勝海舟だと、西郷隆盛にわかってもらう為に、女中のいと(磯山さやか)が「はい!旦那さま!」と自然と返事をするのを利用しようとする場面。

 

毎回、毎回、ここで、お客さんに今日だけのハプニング、アドリブと思わせるぐらいの慌てた熱量で爆笑をかっさらっているんだろう。

 

汗だくで吠える獅童さんを遠巻きに見る、ほぼすべての出演者。

みんな目をそらしたり、うつむいたり、吹いたりして、獅童さんが苦しみのたうちまわるのを、もはや観客になって楽しんでいる風。

 

ここで獅童さんの中に勘三郎さんを感じた。

 

いや、もっと前から、最初からか…わがままで、勝気なくせに弱気で、でも腹を括ったら豪胆で格好良くて、でもそこに至るまで煩くて…端的に言ってみれば面倒せぇ男として描かれていた勝海舟なんだけれど、それでも人を惹きつける圧倒的なチャーミングさに溢れていた。そんなところが勘三郎さん。

そしてこの二幕の暴走。

 

もうちゃんとやれるまでオレ帰んないし、帰らせねーからな!

あの人ね、自分がかっこいいと思ってるんだよ!あんなすっと立っちゃってさ!

おい!!ちゃんとやっぞ!!次こそな!!ねぇ、聞いてる!?!?

声ちっちぇえんだよ!!!!!!!

 

みたいな感じで、とにかく力一杯、大声で台詞を吐いて観客を面白がらせてくれた。笑わせてくれた、楽しい特別な気持ちにさせてくれた。

 

勘三郎さんのお客さんの引き込み方と同じ匂いのする引き込み方。

ぐっとその人に観客の集中が集まって、次は何をするのか、目が離せない。

とにかく見ているだけで楽しい。おかしい。愛しい。

 

歌舞伎役者は普通の役者さん以上に、年がら年中芝居の世界の中にいるイメージがある。それも幼い頃からずっと。そんな芝居漬けの生活が、こういう人を惹きつける底力を持つ身体を生み出すのだろうか。

歌舞伎役者を除いて、こういう盛り上げ方をできる人、市村正親ぐらいしかパッと思い浮かばない。その市村さんにしたって、歌舞伎役者と同じぐらい若い頃から芝居漬けの印象がある。

 

お客さんを笑わせるという目的の中で役者としての胆力を爆発させて、どんな状況も観客を惹きつけ乗り越えてゆく。そしてその爆発力はそのまま獅童さんの大きさとして感じられる、そんな場面だった。まぁこちらはただおかしくって笑ってただけだけど!

 

 

そして、ここまで大きく爆発する姿を見せられた後、すっと腰を落として、肝の据わった静的な芝居をすると、その落ち着きもより格好良く見えるってなもので。

 

獅童さん、とっても大きな、素敵な役者さんになられたな。

 

と、実感できたことが、この『江戸は燃えているか』一番の収穫。

 

芝居を見始めてやっと十年過ぎたところ。付かず離れずでも見続けていたら、こんな風にパッと花が咲くような瞬間にも出会えるわけだから、観ることはやめられない。変化していく姿を感じられることが楽しいんだ。

 

ただいまおじさん、おかえり!!

 

 

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さて、ほかの出演者の皆さん。

 

確か、豪華だった。

確か獅童さんとTOKIOの松岡くんが真ん中で演舞場で三谷幸喜、はい、買っとこか。ぐらいの三谷買いをしていただけなので、誰が出てるのかおぼろげなまま見始めた。

 

うぉーーー聖子さんやー!

八木さーーーーん♡

あ、松岡茉優ちゃん!!

ずん飯尾坂本アンナチュラル !!

ってか、妃海の風ちゃんじゃん!

はい、森本頑張れー(田中圭くん)

あら、堀田作兵衛まで(藤本隆宏

 

豪華だった。

 

 

聖子さんの芝居は、タイミングと動きから静止する際の身体の型といい、いのうえひでのりが居らずとも、いのうえ型芝居の体現者。型というと硬いイメージを持たれるかもしれないけれど、聖子さんの型は柔軟な型。例えば襖をしめる、振り返る、そんな動作だけでも美しく三谷演出にハマっていて、見ているこちらがガッツポーズしたくなる。あいも変わらず大好きな女優さん。

 

八木さん初舞台だって!真田丸があったからお着物姿も真田丸登場初期と比べたら随分と馴染んでいて、しかも三谷演出。私、三谷幸喜と女優の趣味合うから。三谷幸喜が好きな女、たぶん私も好きだから。三谷さんが八木亜希子のこと好きなのよくわかりました。有働由美子のことも好きでしょ、三谷さん。有働さん、フリーになったら三谷芝居ね。

 

あ、有働さんと言えば、冒頭のナレーションは有働さんじゃないのかな?パンフレットを購入された方がツイッターでつぶやいてらしたのが、

 

「土味憂子」→「どみゆうこ」→「うどうゆみこ」→「有働由美子

 

アナグラム説。たぶん、諸事情ありでクレジットできない、で、これが正解でしょう。^_^

 

今もなおノリに乗ってる松岡茉優ちゃんに三谷幸喜がこの役を振ったことにまず笑ったし、安心もした。演じることに真っ直ぐな自分勝手だよね、茉優ちゃん。いいよ、いいよ。『陥没』のKERAさんの当て書き、そして三谷さんのこの役…信頼する二人の作家が女優・松岡茉優にこんな役を当てるのだから、彼女を見ていると想起させられるのがこういうキャラクターなのだろう。無自覚の残虐性がある、可愛いくてしたたかに賢い…実力とド根性を作家が認めていないと、こういう役は振れない。松岡茉優は信頼された女優だと思った。(早く元気になれよー)

 

ずんの飯尾さんは、独特のテンポをどんな場でも崩さず発揮できるの貴重!三谷作品の中でも殺されないで、そのテンポを維持できる、また三谷さんもそのままのテンポを使えるだなんて、すっげぇ!

 

すっげぇ!もう一人、妃海風!!!ヅカファンだからOGはなんかみんな親戚の子みたいな気持ちになってしまうのだよー。めっちゃよかったよー。勝の妹役で、圭くんの奥さん。小さな湯の町と生まれの西の方で鍛えられた独特のテンションの高さと、的確に仕事をこなす職人的技術力の高さで、場面をしっかりかき回してた。三谷さんが『妃海さん、できるな』と感じてくれて、どんどん要求が高まっていったんじゃないかと思える場面の数々で、そういうのがまた嬉しかった。いきなりのレビューシーンも、演舞場で求心力ない人に任せられないよ。しっかり爪痕残してた、風ちゃん。がんばった。

 

がんばったのか?うまいのか?へたなのか?わっかんないな!となるのが森本。。。あ、田中圭くん。基本風ちゃんの尻にひかれた旦那さんなんだけど、ラストはピシッと嫁をキュンとさせてたし(そのキュンを見せるのならば宝塚の娘役トップ、芸持ってますよ)、格好もいい。ただやる気があるんだかないんだかとかもよくわからない。あるようにも見えるしないようにも見える。割と現代っ子俳優だな。(同世代)

 

獅童さんのことはいっぱい書いたから、松岡さん。

 

この人になら米倉涼子あげてもいい!←

 

最近超米倉好きな、ヨネ何してても可愛いよ時期に突入している私が、大事なヨネをあげてもいいと思うんだから、松岡昌宏、とんでもねぇ、かっこえぇ。

 

歌舞伎に型があるのならジャニーズにも型がある。

 

梯子に座った姿の、なんともう格好良いこと。脚の長さ。羽織をまとう姿のキマること。おいおいおいおい…!となりました。

自分が格好良いことをわかっていて、それをさらによく見せる見せ方も存分に知っている人。プロのカッコイイがジャニーズ。ありがとうございました。

 

 

三谷さん、演舞場のキャパで、これが出来るのだから、演舞場のキャパでも『国民の映画』 方面の作品、作れるのでは?

KERAさんの『百年の秘密』に笑いがないと本人たちは言っていたけれど、やっぱり笑える場面はあると私は思っていて、それは三谷さんの『国民の映画』も同じで、だって『真田丸』もそうだった。

 

どんな人も楽しめて、でも笑いだけでは終わらせない。

ずっと後世まで残るような。

そんな三谷幸喜の集大成と言えるような作品を演舞場ぐらい大きな劇場でも観てみたい。

そうしたら、単純に、もっと沢山の人に観てもらえる。